vol.016 うどん

うどん
うどんが好きです。
讃岐うどんなら尚良いです。

数年前のとある冬の朝、地元の駅で立ち食いそば屋に寄ったときのこと。
育ち盛りだった僕は「かき揚げうどん大盛りで」と頼むと、おばちゃんからは予期せぬ一言。

「ごめんね〜、うち大盛りとかやってないんよ〜」。

僕はその驚愕の出来事に膝から崩れ落ちた。
と同時に、当時勤めていた会社で上司に呼び出されたときの事を思い出した。

上司はミーティングルームのドアを閉め椅子に腰をかけると真剣な面持ちで僕に言った。

「いいか、よく聞けよ。
“うどん”と一言でいってもな、実はその盛り方には二通りある…
並盛りと……大盛りだ!

彼はそういうとミーティングルームを後にした。
(呼び出してまで言うこと?!!)

大盛りという選択肢はその後の僕の人生を大きく変えた。
当時、新陳代謝も著しく食欲旺盛だった僕にとって、並盛りでは満足できない時は多々あり、そんなときは迷わず盛りを頼んでいた。
その結果、仕事は順調に結果を残すようになり片思いだった恋も実った。
(怪しいパワーストーン的効果)

うどん1

いつしか京浜東北線の大森駅に愛着すらわいた。

なんならオーモリ・ヘップバーンの『ティファニーで朝食を』のDVDも借りた。

えっとー
これ自分で説明しちゃいますと、『オードリー』と『大盛り』の五音がなんか似てるから、ダジャレ的に言ったらもしかして面白いんじゃ無いかなーという軽いノリ書いてみたんですけど、まぁ、人によって賛否両論あるかとは思いますので、蛇足なんじゃ無いかというご意見もあるかとは(長くなるので省略)

と、そんな思いもあってか、大盛りの選択肢がないということは僕にとっては免れない兵役を告げる赤紙が届くような気持ちだったわけで。

しかし野ざらしのホームでの凍てつくような寒さに加え、意識が遠のくほどの空腹。
僕は生命(いのち)を繋ぐため、仕方なく並盛りを頼んだ。

まずは、かじかんだ手を暖めるようにどんぶりを両手で覆い、澄んだ琥珀色の汁を静かにすする。
口の中に広がるしょっぱさが出汁に溶け込んだ醤油によるものなのか僕の頬を伝う涙によるものなのかは分からなかった。

そうこうしてると後から来た常連らしいサラリーマンが僕の横に立ち、おばちゃんに「山菜うどんね〜」といった。
すると、おばちゃんから耳を疑う衝撃的な言葉が飛び出した。

「今日は大盛りじゃなくていいのかい?」

 
 
 

 
 
 

「今日は大盛りじゃなくていいのかい?」

 
 
 

 
 
 

「今日は大盛りじゃなくていいのかい?」

 

おい、おばちゃんと。

大盛り出来るんじゃねーか!!!

 
「Ⓒイラストレーター トツカケイスケ