vol.018 美容院

美容院
忙しさにかまけて、しばらく髪を切っていなかったので結構ボサッとしてきた。
このまま放っておいたら、いずれはボサボサからモジャモジャになり鳥の巣のようになっていくこと請け合いだ。

が、時既に遅し。
いち早くこの新築物件を見つけたメジロが「チーチー」と鳴きながらさっそく引っ越してきた。
最近の子には珍しく、ご丁寧に引っ越し蕎麦を持って挨拶にきた。
とはいえ、人の頭に勝手に住みつきやがって…
と、最初はイラっとしていたものの、小さな可愛らしい体のわりに渋い抹茶色の羽のギャップに趣を感じ僕は次第にこのメジロに愛着がわくようになってきた。
煩わしかったはずなのに、巣から離れている間はなんかだ寂しくなり帰りが遅いと心配で近所を探しに行ったり、時には警察に捜索願も出した。
それでも見つからない時は、千里眼を持つと言われるあの元FBIジョゼフ・マクモーニグルに依頼をしようかと思うほど、いつしか親子のような情が芽生えていた。

しかし、その間にも髪は留まるところを知らずにグングンと伸び、このまま伸び続けたら、鳥の巣どころか富士の樹海のようになりかねない。
360度どこを見渡しても同じような視界に加えコンパスも利かないこの深い森の中に入り込んだりしたら二度と戻ってこられないかもしれない。

そう思うと、僕は泣く泣くメジロとの二世帯住宅を断念し髪を切る決意をした。
とはいえ、いきなり家を追い出され、途方にくれたメジロは友達の家を転々とし、ゆくゆくはネオンギラつく夜の街に繰り出すようなことはさせたくない。
僕は近所にある梅の木につたないながらも新しい巣をこしらえた。

「また会いに来るからな!」
その言葉が、お互いの新しい生活への第一歩となった。

僕は涙を拭き一息つくと、さっそく行きつけの美容院に電話をかけた。
電話なんて普段あまりかけないし、慣れていないから緊張で手が震える。
上手くしゃべれなかったらどうしよう…
親が出たらどうしよう…
(好きな女子宅に電話する昭和の中学生!)

と、そんなカリビアンジョークはさておき(どのへんが!?? )
僕はあっさりと予約にこぎつける。

さてさて、僕の行きつけの美容院には魔法の鏡がある。
伸びっぱなしだろうが、どんな状態で行ってもイイ塩梅に見える。

「今日はどうしますか?」と美容師に聞かれると『このままでイイです』と言いたくなるほど。

たまに冗談でそれを言ってみると、「では、早速お会計お願いします」とノッてくれる美容師さんは流石だ。

美容院1

Ⓒイラストレーター トツカケイスケ